最後のともし火

2002年4月13日

 病室に入る
 
 二日間徹夜しているイトコの奥さん
 
 「遠いとこごめんね」と気弱に挨拶する
 
 仰臥せず ベッドに背中を丸めるように座り
 
 腕にはモルヒネの管 酸素マスクをつけ
 
 日に焼けた顔色とちょっと違う 土気色の顔で居た
 
 若い頃の作業がたたっての 塵肺のような肺の機能低下
 
 呼吸が自力で出来なくて昨夜は大変だったらしい
 
 家人がいとこに近づいて声を掛ける
 
 うつらうつらした目をそっと開き 家人を認識したらしい
 
 「がんばらなんよ」
 
 「おお・・・ もう1件 家ば建てるけん・・・(笑)」
 
 しばし周囲が笑いさざめく
 
 「そうよー あと1件 T君(6月に結婚の)に建ててやらんば(笑)」

 
 
 
 2時間ばかり談話室にいて
 
 次々と集まって来る親戚や
 
 いろいろな知り合いと久しぶりの歓談をし
 
 哀しいかな こんな時にしか親戚も集まる機会が無いのだ
 
 家人も動かせない仕事のため帰熊せねばならづ
 
 ふたたび病室へ
 
 さっきと同じ状態でうつらうつらして座っている
 
 さっき話してからずっと この状態なのだそうだ
 
 「また熊本に来なんよー」
 
 イトコのごっつい手を握り そう呼びかける家人
 
 「Yちゃん、熊本で待っとるけんね 頑張ってよお」
 
 うつらうつら座ったままのイトコ
 
 反応がないまま 辞しようとしたそのとき
 
 「おう!」と座りなおって 酸素マスクをうっちゃって
 
 いつものイトコのうちの茶の間に居るかのように
 
 「熊本 また行くけんね!」
 
 とハリのある声で挨拶したので一同びっくり
 
 
 
 
 実家への帰り道 家人の姉がぽつんと
 
 「Yちゃんはああして見栄はるとたい」
 
 それでもいつもの声に近く話せたので家人は すこし安心して
 
 帰熊の途についたのだった
 
 
 
 
 
 
 さて 今日は待ちに待った
 
 「ジョージ・ウィンストン」のピアノコンサートの日
 
 友人3、J、例によって友人Cと 県立劇場にて待ち合わせ
 
 久しぶりにあって まじ うれしい
 
 シリアスないち日が癒されていく
 
 高速道路を往復6時間弱の 疲れが手伝い
 
 コンサート開始早々 ねむねむモードになるワタシ
 
 ふととなりの友人J ひじを座席のひじかけのとこに
 
 こん・・・とぶつけ、なでなでしているのを横目に感じ
 
 (^m^ )うぷぷ
 
 かくしてJ・ウィンストンに癒されるワタクシであった
 
 「ジョージ・ウィンストンって実物知らないから
 
  いま弾いてるのがニセモンでもわかんない ワタシ(笑)」
 
 
 
 さてロマンチックな夜にふさわしく すぐ向かいの
 
 『サンマルク』にて(1時間待ち)ディナー(笑)
 
 友人Cに乗せられワインのコースも頼んで… うまし♪
 
 
 
 久しぶりの友人たちとの語らいとおいしい食事
 
 そしていい気持ちに酔っていたら 家人からメール
 
 「8時30分 逝く」
 
 「哀しさが手の温もりを思い出す」
 
 
 
 そのときはふうんわりした気分で涙も出なかった
 
 
 
 
 
 親しい人は春先に旅立つものなのか・・・
 
 
 
 
 
 
 
   
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 

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